新型コロナ対策の一環として、当館では年内の展示活動を休止させていただくこととなりました。ご不便をおかけすることをお詫びするとともに、こちらのブログで収蔵作品のご紹介を出来たらと考えております。
つかの間の一時をお楽しみいただけましたら幸いです。
1-1、青山杉雨 「捜秦漢 衆晋唐」
現代書壇の巨匠、青山杉雨は行草とともに、構築性の高い、篆隷の造型的な書で知られています。一作一面貌とも評される作品の変化は、現在(いま)を表現することに腐心した杉雨ならではの軌跡で、多様な引き出しに造詣の深さを感じます。現代における書の姿をいち早く想像し、実現した杉雨の業績は特筆に値します。当館もまた、書を芸術として愛好する人々が集う美術館としてその遺志を継いでいます。
昭和39年の第26回謙慎書道会展に出品された「捜秦漢 衆晋唐」は杉雨の思想がよく表れた一作です。各体の基本となる晋唐の古典をあつめて、その背景となる前代の秦漢の風を探るという文言からは、俯瞰的に書を理解した上で現代の書を探求した杉雨の書業が想い起されます。大きくとった字間は秦漢、力強い筆致は六朝あたりでしょうか。縦六尺の真ん中やや下部に押印された落款印も会場の展示を意識した構成になっています。(山﨑亮)
「捜秦漢 衆晋唐」 青山杉雨 昭和39年第26回謙慎書道会展 紙本墨書 二幅 186.1×52.6㎝×2 成田山書道美術館蔵